装苑賞1992年10月号 稲葉賀恵先生 佐藤真樹

装苑1992年10月号 稲葉賀恵先生選

1992年、稲葉賀恵先生との対談

稲葉賀恵先生

きれいにできたわね。
最初からわきをあけようと考えていたの?

佐藤真樹

三角のまちを入れようかとも思いましたが、腕を下ろしたときに、わきがあいているほうがシルエットがすっきりすると思ってこうしました。

稲葉賀恵先生

そうね。このほうがよかったと思うわ。
ただ、わきをあけたことで、中に着ているものを見せたかったわけではないでしょ。
インナーがわきから垂れて、のぞいて見えないほうがいい。
これは綿ジャージね。
もっとストレッチ性の強い生地で、腕にぴったりさせたほうが、この場合はいいんじゃないかしら。

佐藤真樹

インナーだということで、ちょっとイージーに作ってしまいました。

稲葉賀恵先生

厚手のウールを使ったのはよかったと思います。

佐藤真樹

一重仕立てでよかったでしょうか?
全体に芯を貼ろうかとも考えたのですが・・・・・。

稲葉賀恵先生

芯を貼る必要はありません。
表地だけで充分シルエットを保っているもの。
仕立てのことをいうなら、袖口のまつり目が表にひびいてしまったのが残念です。
ヘムの奥をひびかないように軽くまつらないとだめ。縫い代を全部バイアス布でくるんでいるけれど、そこまでする必要はなかったと思います。
几帳面さが裏目に出てしまったみたい。
わきや衿ぐりの返りは布地の厚みを感じさせるからいいけれど、袖口はすっきり仕立てないと、シンプルなシルエットの中でもたつきが目立ってしまうでしょ。
この帽子はどうかしら?
もう少し大きくてもかわいいと思うけど。

佐藤真樹

服のボリュームに対してうんと小さいほうがバランスがいいと思ったのですが・・・・・。

稲葉賀恵先生

この大きさでは服に負けているし、斜めにしてくずす必要はないと思うわ。
この帽子なら、もっと前かぶりにするか、思いっきり後ろかぶりにするほうがいいと思います。

 

製作時の思い出

稲葉賀恵先生に選んでいただいた、2番目のデザイン画です。

このドレスは、縫い代を全てパイピング始末にして割りました。

縫い代の始末に、時間が一番かかりました。

使った布は、ウール・メルトンです。

パーツごとにアイロンで十分にくせ取りをしてから、縫い代をパイピングしました。

くせ取りとパイピングの作業を、装苑賞の候補作品を作るときにやっておきたいと思っていました。

ドレスの型紙は、オーソドックスに作りました。

稲葉賀恵先生に選んでいただいた服は、地の目が全て縦方向に通る服でした。

裾の折り返しは、バイアスカットしてあります。

裾の折り返しと見返しを、わで裁断しました。

両面接着芯を使って、一枚になるようにボンディングしました。

ボンディングされたバイアス地の裾は、適度な張り感を持っていました。

この裾を折り返すと、きれいに折り返りました。

裾の折り返りは、留めなくても下に落ちませんでした。

文化出版局の方に、「今まで見た裾の折り返りのデザインの中で一番よくできていた」と褒めていただきました。

私が一番気に入っているのは、衿ぐりです。

ハイネックが、首をきれいに包み込んでいます。

バランスでいうと、裾はもう少し狭くてよかったと思います。

このころから、私は縫製がとても上手くなりました。

私は装苑賞を、服の勉強の場と考えていました。

装苑賞の候補にデザイン画が選ばれる度に、私は新しい技術を試してみました。

私は「装苑賞が欲しい」という気持ちは、人一倍あったと思います。

しかし私は、「賞を取れればいい」とは思っていませんでした。

装苑賞を通して、私は服づくりが上手くなりたかったのです。