装苑1992年2月号 山本耀司先生 佐藤真樹

装苑1992年2月号 山本耀司先生選

1992年、山本耀司先生との対談

山本耀司先生

素材はポリエステル100パーセント?

佐藤真樹

はい。ピーチスキンです。
シーチングで仮縫いしたときには、イメージどおりの形が出せたのですが、この布では垂れ下がってしまいました。

山本耀司先生

素材選びをまちがえてしまったね。
ポリエステルにこだわった理由は?

佐藤真樹

光沢のぐあいとドレープ性です。

山本耀司先生

こういう素材は縫い代が落ち着いてくれないし、くせとりもできなくて難しかったでしょう。
前身頃は正バイアス?

佐藤真樹

布を自由に遊ばせようと思って、ボディの上でいろいろ動かしてみました。

山本耀司先生

適当というわけだね。
佐藤君の服作りは、そういう部分がよくも悪くも不安定なものだと思う。
気分や雰囲気で服作りをするタイプだね。
歩み方は人それぞれだから、服作りの基本にとらわれない自由な発想でやりたいなら、徹底して続けるのもいいかもしれない。
でも、この服を見るかぎりでは、伝統的な服作りの延長にはないおもしろさが出ているかというと、そうじゃない。
でき上がったものとしての存在感、迫力、魅力が感じられないね。
少しだらしない。
ひと言で批評するなら、それにつきるね。

佐藤真樹

デザイン画が抽象的だったので、形にするのにすごく悩みました。
特に肩のドレープが思ったようにいかなくて・・・。

山本耀司先生

ドレープには2種類あると思う。
この一点にドレープが欲しいという作り方と、着て動いたときに自由な流れが出るものと。
この服はその中間のあいまいな作り方だと思う。
気分の服を作ろうとしているのに、なぜ肩にタックをとったのか。
どうして肩線や脇線や後ろ中心にこだわるのか。
いろいろ迷ってしまったし、計算もしてしまったから、ピュアじゃないね。
もっと自分の好きなものだけに絞り込んで作ったほうがいいですよ。

 

第66回装苑賞公開審査会の模様

装苑1992年2月号01 山本耀司先生山本耀司先生の後ろ姿

 

製作時の思い出

山本耀司先生にデザイン画を選んでいただいて、本当に嬉しかったです。

同時に、「山本耀司先生は、何でこのデザインを選んだのだろう?」と思いました。

このデザイン画は、すごく作りにくい服でした。

山本耀司先生が私に対して、「俺に挑戦してみろ」と言っている様でした。

自分でデザイン画を描きながら型紙を作っている私は、デザインした私に文句を言っていました。

制作の途中で、ジョン・ガリアーノのようにしたいと思いました。

ロンドンコレクションに参加していた若きジョン・ガリアーノが、壊れた傘のようなコートを発表しました。

この黄色い壊れた傘のようなコートを見たとき、ジョン・ガリアーノの才能がわかりました。

私は、スカートを傘のようにしたいと思いました。

傘の骨を6本使い、ウエストでとめられないかと思いました。

しかし傘の骨を使ったスカートをはいたら、ウエストに骨が食い込みそうです。

私は、傘の骨を使う案を断念しました。

次に、スカートに裏打ちをして張りを持たせようと思いました。

しかし山本耀司先生が指摘している通り、布地選びで失敗しています。

それからスカートに付いている垂れ下がりを考えると、スカートの構造を変えた方がいいでしょう。

この服を作っているとき、「山本耀司先生に褒めてもらいたい」という気持ちがありました。

その気持ちが、この服をピュアでなくしてしまったと思います。

この服の出来が良くなかったので、良かったこともありました。

私は、山本耀司先生からためになるアドバイスをたくさんいただきました。

コンテスト(特に装苑賞)に応募すると、恥をかくことがたくさんありました。

しかし何もせず恥をかかないよりは、装苑賞にたくさん応募してたくさん恥をかいた私の学生時代は価値があると思います。